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2008年2月10日 (日)

伐採

樹を伐り倒す。

この作業こそ、斧が本領を発揮すべき場だ。チェンソーにお株を奪われたのはせいぜいここ50年。それ以前の一万年来、石器時代から青銅器時代、そして鉄器時代に至るまで人は斧で大木に挑んできた。インディオが焼畑にするアマゾンの森も、フェニキァ人が船を作ったレバノン杉も、太閤秀吉の命で伐られた屋久杉もすべて斧で倒され、そして加工された。

伐採は言うまでもなく危険な作業である。渾身の力をこめて斧を振るい、大木にぶち当てる。水気を含んだ木片が飛び散り、切り口が大きくなる。やがて静かに軋み始め、ゆっくりと傾く樹。一瞬の静寂の後大木は大きく大きく傾き、地面にドウと倒れる。

重い斧をふるって疲れた身体、倒れ来る樹をかわし切れず下敷きになり、あるいは倒れた樹が横滑りして吹っ飛ばされる。その間合いを感覚のみでとらえるのは危険極まりない。従って、樹が倒れる方向を決めるのが死活問題だ。

まず地形や木の形を見て倒す方向を決める。決まったならば、木の倒す方向側から斧で切り込む。最初に斜めに一撃、次に水平に一撃。また斜めに一撃、水平に一撃。これを繰り返し、三角形に切り込む。

Photo この倒す側の切込みを「受け」という。受けが木の直径の半分まで達したならば次に反対側の少し上から切り込む。斜めに一撃、水平に一撃、斜めに一撃、水平に一撃。この反対側からの切込みを「追い」という。「追い」は、斧よりも鋸で切り込んだほうがより安全であり、かつ樹を無駄にしない。しかし鋸が伐採に使われるようになったのはせいぜいここ300年ばかり。それまではやはり斧で追い口を切り込んでいた。

追い口は次第次第に深く切り込まれ、受け口と同じく木の直径の半分に達するばかり。ここにいたって静かに樹が軋み始める。

ピシリ、ピシリ。

軋みは大きさを増し、やがて受け口の方向へと樹がゆっくり傾く。 一瞬の静寂。

夏ならば葉が風を切ってザザザと鳴り渡りつつ幹を傾かせ、地面にドゥと倒れる。

これが、チェンソーが普及する前の伐採方法であった。チェンソー普及のちも、三角形の受け口をチェンソーで作り、反対側から追い口を切り込んで倒す方法は変わらない。

Photo

しかしこの方法、上の図右側の「はさみ伐り」には、欠点もある。

倒す際に、木の芯が割れてしまう「芯が抜ける」という失敗。これをやれば丸太に大きなヒビが入り、材木としての価値はガタ落ち。

そこで失敗できない大切な材木を切り出す場合には上の図左側、「三つ紐伐り」が用いられた。

木の周囲三方向から三人がかりで斧をいれ、伐りくちを木の中心でつなげる。丁度、樹が三本足で立っているような状態にする。そして三本足の一本を切れば、樹は思う方向に倒れてくれる。最初から切り口を交差させ、樹の芯をえぐってしまえば、倒れる際に割れる心配も無い。三本足の姿から、古代中国の三本足の青銅器にたとえて「鼎伐り」(かなえぎり)ともいう。

この方式は、現在でも古式ゆかしく、絶対に失敗できない伊勢神宮のもっとも大切な用材二本の切り出しの際に用いられる。

Photo

何人もの木こりが交代していれた三方向の切り口が木の中心で交わる、最後に足を一本きる。樹は倒れ、隣で同じように斧を入れられて倒れたもう一つの樹と交差する。

20年に一度の伊勢の御遷宮の、最初の大切な行事。伊勢神宮に所属する木こりが、この20年に一度の儀式のために「三つ紐伐り」を伝承している。

「熊を殺すと雨が降る」

木こりに木地師、マタギに川漁師。山に生き、山を敬う民の生活を重厚な文章と新鮮なイラストでかき表した良書。作者が数十年にわたって集めた、全国各地の山の民の生活がこの一冊に光る。

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コメント

三つ紐伐りですか・・・初めて知りましたwこの技術の到達に歴史を感じますconfident

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