アメリカ斧の歴史 その3 「両刃斧」
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アメリカ斧の典型例といえば、両側に刃を持つ「両刃斧」である。
ホラー映画では殺人鬼が操るメインウエポンとして親しまれている?この両刃斧は、西洋においては石器時代、さらにギリシャの青銅器時代より使用されている、大変歴史のある刃の型である。バタフライ型の大斧を操るゲルマン民族はローマを恐怖に追い落とし、騎士は宿敵を鎧ごと叩き斬る非常なる武器。
しかし伐採専用としての両刃斧は、意外にも新顔の道具である。はじめて「伐採用」としての両刃斧が成立したのは、1850年ころのアメリカ東部・ペンシルバニア州。その後、白人入植者によるアメリカ大陸蚕食にともない徐々にアメリカ北東部に普及し、西部開拓が本格的になった19世紀広範に至って太平洋岸地域にも持ち込まれた。
樹齢数千年、直径数メートルの巨木が林立するアメリカ西海岸の温帯多雨林に至り、峰打ちの慈悲など持ち合わせない両刃斧はその本領を発揮するのであーる。
ああ…どれだけの巨木神木が無慈悲な斧の手にかかって悲劇的な最期を遂げたことでありましょうや。
さて、疑問。
シングルビットアックス(一般的な片刃の斧)とダブルビットアックス(両刃斧)とでは、どちらが実用的なのか?
これに関しては、本職の間でも意見が分かれる。片刃斧は刃の反対側を鎚として代用できる。薪割りの際はクサビの頭を斧の峰でブチまくれる。一本で斧とハンマーを兼用できるのがシングルビットアックス。
一方で両刃斧は刃のそれぞれの研ぎを換えることで、伐採できる樹種の幅が一層広がる。柔らかい針葉樹は鋭利に研いだ刃で。硬い広葉樹は鈍くとも頑丈に研いだ刃で。ふたつの刃を持ち、一本で2度オイシイのが両刃斧だ。しかも意外な長所としてあげられるのが、その「T字型」の姿態である。
樹木の伐採をするときには、まず斧で徐々に幹をえぐる。その途中に深くえぐった伐り込みに「T字型」の頭を差し込むことで、木の倒れてくる方向を予測できるという。これはなかなかにうまい考えではないか。
両刃斧はアメリカの営林署に当たる機関で専門的に採用されているが、片刃斧の人気も一方で高い。丸太きりの早さなどで競う「樵選手権」で使用される斧は、伝統的に片刃斧である。
ともあれ、この翻訳記事の基原稿によれば、「シングルビットアックス」は専門的な切断工具であり、「ダブルビットアックス」は汎用性のある切断具だということだ。
ちなみに私自身の体験として言えば、「伐採」に限って言えば片刃斧よりも両刃斧の方が使いでが良い。左右にバランスよく刃が配置された形ゆえ、振る際にブレを生じさせず疲れにくい。刃がふたつあるという意味でも、研ぎの回数を減らせ一気に切り込める利点がある。
でもまず薪割にはむかないね。峰の無い形ではクサビを打ち込めず、振り上げどころまちがえたら…
顔面真っ二つ!
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コメント
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初めまして!とあるゲームにて木こりモチーフのキャラが両刃斧を使っていて、ふと両刃斧って危ないのでは?と思い検索したところ、このブログにたどり着きました。
両刃で研ぎを変えてあったり、木が倒れる方向の予測など、普段斧を使い慣れている木こり達ならではの使い方だなと思いました!
投稿: 湯気 | 2017年8月 3日 (木) 16時19分
はじめまして。ゲームのことは良く分からないけど、最近ポールバニヤンが妙にネタに上がっているらしいですね。ググったらなぜか少女キャラだったりして。
横に振るんじゃなくて振り上げれば顔面真っ二つになりそうで怖いけれど、デザイン的にも機能的にもいい両刃斧が日本になかったのは残念ですね。
投稿: 管理人 | 2017年8月 5日 (土) 08時45分