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2016年5月30日 (月)

「さって」と「はびろ」―北海道の斧

明治以前まではほぼ全土を大森林に覆われていた北海道。

明治の開拓と同時にその大森林は伐られ、焼かれ、そして田畑や牧草地へと変貌していったわけであります。資源小国日本の数少ない穀倉が開かれていくと同時に、ナチュラリストが卒倒する光景が各所で繰り広げられたわけであります。

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さて平地の森林は次々に開墾されて畑に変貌していく中でも、山地の森林はそのまま残されている。そこはやがて木こりたちの独壇場となります。

北海道の森林は、文字通り千古斧を知らない大密林。林立する巨木は、それまでおとなしく本州で木を伐っていた木こりたちの手には負えません。そこで北海道の「山子」(木こり)が使う道具は自然と大型化していきました。

伐採の際は、まず受け口を伐りこむ。その際に用いる道具がさって

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漢字で書けば「去手」。名前の由来は不明ですが、本州の「伐りヨキ」を大型化させたもの。木の芯に深く打ちこめるよう、刃渡り10センチ程度ながら足の長さが30㎝以上もある。もっともこんなアンバランスな形だからこそ、横に振ればガクッとブレやすい。北米から指導者を招いた北海道開拓ながら、北米式の曲線柄や両刃斧は伝来しなかったのが惜しまれる。

サッテで受け口を伐りこんだ後は巨大な横挽き鋸「天王寺鋸」で追い口を伐りこみ、最後にくさびを打ち込んで倒す。

R1

伐倒したのちは手斧で枝を落し、天王寺鋸で手ごろな大きさに玉切り。
その上でハツって大まかな角材へと加工します。その際に使われたハツリヨキが「刃広」(はびろ)。

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刃渡り20㎝以上、本州中部地方のハツリヨキやマサカリに比べ異常に首が長いので、俗に「鶴首」とも呼ばれていました。柄の長さ1mはある巨大なハビロで樹皮をはがし側面をハツり、その上で森から出す。

農業や生活の障害となる雪は、山仕事にはまたとない助け。
林床の障害物を覆い隠し、滑りを良くするので、馬橇による運搬には好都合。そのため明治期から重機が発達した現代まで、山仕事は冬の農閑期、周辺農民のいい手間稼ぎでした。

凍ったマサカリや鋸に手がピタピタ張り付いて凍傷になりかけない寒さの中、凍った握り飯をむさぼりつつ仕事に励んだのであります。

Bassai

明治期以来の山林造材で枯渇しつつあった北海道の森林資源は、昭和29年洞爺丸台風の風害でとどめをさされました。現在では想像もつかない、豊かな森林を誇った往時の北海道。

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コメント

北海道が、和洋入り混じった鉞の新天地になっていれば・・・と思うと胸が熱いですね。とても勉強になります。

いつもながら豊富な話題による更新、敬服いたします。
首が長い斧は比較的軟らかい北海道の樹木に適応していたのではないでしょうか?
インドネシアにおいて硬質材の多い原生林やマングローブの伐採者は首の短いアメリカ製斧を好み、チークやマホガニー、松などの人工林の伐採者は首の長いヨーロッパ製の斧や地元鍛冶屋製の斧を好むのも材の硬さによる選択だと思えます。

おひさしぶりです。
北海道の木こりが主に伐り出していた樹は柔らかい針葉樹…エゾマツやトドマツなので、長い脚の斧での伐採には合致しているでしょうね。中にはミズナラなど硬い木もありますが。

でも東南アジアで、チークの伐採に足の長い斧が使われているのですか?チークは硬いイメージがあるので意外です。

木材全体で見ればチークもマホガニーも硬い部類ですがミズナラよりはやや軟らかく、紫檀・黒檀クラスの超硬の木がいくらでもある熱帯では硬い木として扱われていません。
なかでも人工林で急に育った木は軟らかいので足の長い斧で深く伐り込むのが能率がいいようです。
マングローブはウバメガシ並の硬さで鋭角に研いだ薄刃の斧だとすぐ刃がまくれてしまいます。
炭の硬さも備長炭と変わりません。

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