ブキャナン・スミスの『斧本』
当ブログにおける、もう9年も昔の記事
『大都会・ニューヨークで斧が売れているらしい』
http://isikari.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-fde4.html
時は2009年、リーマンショック。
編集者のピーター・ブキャナン・スミスはスランプに陥っていた。
現状の打破を模索する中で、彼の唯一の友は「斧」。
実家に帰省しては薪割りに興じ、ついには「斧」の新たなブランドを立ち上げる。
現在ではアウトドア全般に手を広げ、「ベストメイド」としてマンハッタンにも店を構える。
「ベストメイド」斧。
銀色のシャープな刃先
ポップにアレンジされた柄。
当時の価格は1本300ドル。
現在では日本でも3万円程度で買えるようだ。
さてリーマンショックどころではないコロナ禍の2021年
ピーター・ブキャナン・スミス氏は満を持して一冊の本を出版した。
曰く
『斧本』
前書きに曰く
「本書は、筆者お気に入りの道具にあてた恋文だ」
自身の斧への愛やブランド立ち上げの経緯。
アウトドアブランド「ベストメイド斧」の詳細
ポップな絵のペイント詳細に
そして、西洋斧の魅力の一つである
「柄の色っぽい曲線美」
さらには「地方ごとの刃の形状」まで詳細に解説され
斧マニアの知識欲を満たし、新たな読者を斧の沼へと引きずり込んでくれる。
もちろん斧の使用法
研ぎ方に錆抜き、
あるいは薪割りに丸太の切断
などなど手入れから主だった使用テクニックまで
意識高い系の訳文、高尚かつ皮肉がこもったネチッコイ文体で
紹介してくれるのがなんとも心憎い。
だが肝心の「木の伐採方法」に関しては「逃げて」いた
その理由
曰く
「この本を読んだ人が素人考えで伐採して、下敷きになられたら困る
チェンソーを使うか、まずはプロに連絡してほしい」
訴訟大国ならでわの予防策と言うべきか
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久しぶりにボリュームのある斧の本が出ましたね。
斧での伐採を勧めない、は真っ当でしょう。
伐採は読みと計算が第一で、危険性は斧を使ってもチェーンソーを使ってもあまり変わらないと思います。
実際国内でも毎年何人もの「プロ」が自分が伐採した木に打たれ、潰されて死亡しています。
投稿: おのじい | 2021年9月 7日 (火) 21時26分
実際にその通りですね。とくに「追い口」まで斧で伐れば、木のバランス、あるいは風の影響で反対に倒れかねない。逃げ道も確保しておかなければいけないが、山は地形の制約があるから思い通りの逃げ道も作れないでしょうし
投稿: 管理人 | 2021年9月 9日 (木) 10時27分