「三つ紐伐り」とは、古代から江戸時代まで
斧一本で大木を伐採する際に用いられた方法である。

まず木の外周の三方向から同時に斧を入れ、
徐々に食い込ませ、内部で貫通させる。
結果、木は三本足で立っている状態になる。
この三本足の状態を、
古代中国の三本足の釜になぞらえ「鼎伐り」とも言う。
最後に三本足の一本を切断すれば、
木は反対方向に倒れてくれる。
そもそも伐採作業での事故や失敗は、
斧や鋸、あるいはチェンソーの刃が
木の芯部分に達したときに起り易い。
木の芯部分は裂けやすい。そこに外部から斧なり鋸なりが達すれば
重量バランスが崩れ、木は真っ二つに裂けて倒れる。
一般的な伐採方法である挟み伐りは、木の裂ける性質を利用した伐り方だが
下手に裂ければ死亡事故につながりかねない。
そして裂けた材は商品価値も大いに下がってしまう。
その点、三つ紐伐りは安全だ。
最初から木を貫通させて芯を取り除くので、裂ける失敗も避けられるのだ。
そんなわけで、現在でも「絶対に失敗できない伐採作業」に
用いられる。
お伊勢さんの式年遷宮で、最も重要な用材を伐り出す儀式の際に
この「三つ紐伐り」の知識は日本だけかと思っていたら、
どうも西洋にも存在したらしい。
この動画
説明文によれば、舞台はデンマーク。
ヴァイキングが北海を疾走していた時代の伐採方式と言うことだ。
日本の伝統方式と同様、三方向から斧を入れて内部で貫通させ、
クサビで倒れる方向をコントロールした上で足を一本切断する。
木は反対方向に倒れる
だが特筆すべきは、この人の斧使いの上手さ。
斧の動きはまったく無駄がなく、リズミカルに音が響けば
小気味良く木片が飛び散る。
そして切り口の下面部は、まるでノコで伐ったかのように水平
カンナでもかけたように滑らかではないか。
もちろん、動画としての撮影編集技術もそん色なし
伝統技術と現代動画技術の共演に驚嘆!といったところか。
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